極寒編

私はデトロイトに住んでいますが、ミシガン、寒いです。どの辺にミシガンが位置するのかというと、五大湖の下当たりと思ってもらって結構です。興味のある方は地図でご確認ください。で、もちろんカナダなんかに比べれば、寒くはないんだろうけど、それでもミシガンは寒い。

私も北陸出身、有名な56豪雪も経て育った体、少々の寒さにはびくともしないはずなんですが、桁違いなんです、寒いってのが。北陸だと、雪は多いけど、たいてい降るのは夜で、日中は氷点下まで下がらないし、摂氏5℃、くらいで「おぉぉぅ、さむぅ」という感じでした。

でもって、ここミシガン。昼間でも平気で摂氏マイナス10℃とか下がります。ちょっと油断すると、マイナス20℃なんて行ったりします。あの、バナナで釘が打てます、ってのをやってみたくなります。気温自体もものすごく低いですが、ミシガンは平たい平野な州なので、風がふきっさらす訳ですね。だから、「ウィンド・チル」と呼ばれる、風の気温ってのも重要です。そういうのはたいていマイナス30℃とか40℃とかです。だから、実際に外を歩いていて感じる気温ってのは、かなりなものなのでしょう。ホームレスも死ぬはずです。

まず、外に出て5秒くらい歩くと鼻がぱりぱりしてきます。鼻水が中で凍っているわけですね。シャワーを浴びて、ちょっと髪が湿っていたりなんかすると、髪の毛がそのまま針金のように凍ります。でも、「おぉぉぅ、さむぅ」って感じじゃないのですよ。外に出ても、あまりに寒くてからだが寒いと認識しないと言うか。痛いとも感じないのです、しばらくは。15秒くらいしてから、「おお〜、耳が痛い〜〜」となる。

ある日、あれっくすと表にでたところ、そんなに寒くなかった。といっても15秒くらいはよくわかんないので、しばらく無言で歩いていたが、どうも今日はそんなに寒くないらしい。「今日ってちょっとぽかぽかして、小春日和って感じよね〜」あれっくすも「ウン、このくらいなら、まあ我慢できるよね」などといったりして。

そこで、道に立っている気温計をちょっと見てみた。
「摂氏マイナス6℃」

かなりな衝撃でしたね。初めは温度計が壊れているのかと思ったくらい(どこの温度計も同じだったので、壊れているわけではないらしい)。そんなので暖かく感じてしまうとは、人間というのは慣れる動物なのだ、と実感しました。

寒さのせいで、日本と同じく朝は車に霜がついて、それを落とさないと運転できません。毎朝、プラスチックのへらのようなものでガシガシ霜をこそげ落としている人をたくさん見ます。フロントガラスに傷が付く、とかそういうことを考えていてはいけないようです。もちろん、カバーを掛けて霜を防ぐというのも有効なアイデアそうですが、ここデトロイトでは、そんなカバーは20分くらいで盗まれてしまうことでしょう。

そのため毎朝霜落としをしているのですが、やたら時間がかかるので、ついぱた弟に電話で愚痴を言った。「もう霜のせいで、いつも会社に遅れるよ」そこでぱた弟、「お湯掛けて溶かしたらいいじゃん」

おお、弟よ、なんてナイスなアイデア。そういえば、北陸ではお湯かけて霜溶かしてたよなあ、なんで今まで気がつかなかったんだろう。それにしても、なんでミシガンの人はお湯使わないのかなあ、お馬鹿さん。

さあ、ぱた、ある朝意気揚々とお湯をもって駐車場へ。今日は一瞬で霜を溶かして、あっと言う間に出発だわ。「タララララ〜ン、と」お湯をかけてみた。霜はじゅわじゅわじゅわ〜〜と溶けていく。おお、なんて簡単。ああこれで会社に遅刻しなくて済むわね。

なんて思ってて、ふとウィンドウ表面を見る。「あれ、なんでこのお湯、流れていかないんだろう・・・?」

そうなのです、かけた端から凍っていたお湯。日本だと、気温自体が低くないので、車の表面が冷たくても、お湯をかけ続ければ車表面も暖まって、霜も溶けてしまいますが、ここ、ミシガンはそう甘くなかった。霜はなくなったが、かけたお湯が分厚く表面に凍りついてしまったのです。ぎゃー。これじゃ、外が見えないから、運転でき〜ん。

例のへらでこそげようとして、うっ、と気付く。「こんなに分厚く凍りついてたら、へらじゃダメだ・・・ハンマーかなんかで叩いて割らないと・・・」

その日も会社に遅刻しました。そんで、なんでミシガンの人がお湯を使わないのかも、よーく分かりました。


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